研修報告書・提出

 研修報告書を書いていたものの、途中PCが壊れて(というか、windowsのアップデート失敗で、HDDが文鎮化した)ので、ファイルサーバーに残していたメモから、再度おこし直しをして、報告書提出が遅くなってしまいました。
 概ね、研修終了から一ヶ月以内の提出なので、本当に、締め切りギリギリで提出。
せっかくなので、自分の書いた研修報告書の内容を記しておきます。3日間のとても濃い研修でした。

研修報告書・研修所管

11/18(月)
○地方自治制度の基本について
 同志社大学政策学部 大学院総合政策科学研究科 教授 野田 遊 氏

 前半では、地方自治についての基本部分から、これまでの地方分権や行財政改革、市町村合併、広域連携についてのこれまでの経過と、世界の自治制度との比較を、後半は、自治体議会・組織についてから、ガバナンス、政策、広報についてを学んだ。
 住民自治(住民が政策を形成)と団体自治(市町村が政策を形成)の二つで地方自治が成り立っている。自治体の議会と執政制度(二元代表制)について、首長の優位性と議会の優位性についても言及があった。
 現在の議員は、ボランティア型(監視強化的な面)が強く、政策立案が出来る専門家型を育成し、それに応じて報酬増をしていく必要があるとのこと。また、なり手不足の問題や、議会の形式的審議(事前に合意形成をされている面)についても、住民の関心の低さにつながっているという弊害が出ている。
 議会改革には、議会事務局の強化と政策立案機能の向上、議会に対する住民の認識向上、なり手不足については専門家型の議員が増やす(専業としての議員活動)ことと、活動に見合った報酬設定が必要である。
 政策立案について、政策過程モデルの中で、問題意識から課題の検討、政策案の作成、決定、実施までは行われているが、その後の「指標・業績測定」が自治体では抜けており評価指標の作成は、自治体運営としての課題であると感じた。
 最後は、広報について。住民の意識は低いが、期待水準は高くなるため、対話と対象者別に広報を考える必要がある。また、広報は一時的なものではなく、効果を持続するために、継続が必要であるとのこと。 地方自治の基本について、何度か同様の研修があったが、振り返る部分と新たに考える部分に気づけたことは大きかった。

○元議長が語る「住民から近くて遠い地方議会から近くて近い地方議会」への一考察 福岡県福津市議会元議長 江上 隆行 氏

 市議会議員の経験に基づき、議会のあるべき姿、一般質問とは何か、議員としての心構えなどの問題提起として20項目をあげての講義であった。
 議員の役割について、現在の地方議員は提言が少なく、追求が多いとのこと。政策提言をすることで、意識改革が進む。また、議会と行政は「車の両輪」と言われるが、議会としての立ち位置をもう一度見直すべき。首長と競い合い、時には対立軸に置くことも必要。単なる追認機関ではない。また、議会機能としてあるのに、使われていない制度が多く、これが、議員の質の低下につながっている。所管事務調査機能などをしっかり行うことで、議員のみならず、議会力の強化につながる。
 決算認定など行政課題について検証が今後必要になってくるので、付帯決議を付けて認定するなど、議会側も単に追認するだけでなく、工夫が必要である。
 また、多くの議会は、委員会や役職も申し合わせにより4年間変わらないことが多いが、話を聞いて、2年に一度入れ替えることにより活性化にもつながるとも感じた。
 質問と質疑の違いについても、混同している場合があり、再度、違いの認識・確認をする必要がある。事務局に、事前に質問・質疑内容についてチェックを受けて、本会議に臨むというやり方は非常に有用だと感じた。また、国の動きを常日頃把握することは必要であり、「骨太の方針」など動向をつかむことが必要。
 議会の調査権について、しっかりと活用すべきであり、執行部に対しての資料請求は議会として要求し(福津市を例とすると議長名で依頼)執行状況等の調査に積極的に取り組む必要がある。
 議会活動・委員会活動・議員(政治)活動が一括りにされることが多いそうだが、本来は議会活動は本会議、その他は委員会活動として、議員個人の活動は政治活動という形で、状況や立場を分けて行うことも必要とのこと。

 住民の福祉の向上に向けて「近くて近い地方議会」を目指せるように講義を聴いて感じた。

11/19(火)
○地方議会と自治体財政 武庫川女子大学経営学部 教授 金﨑 健太郎 氏
 
前半では地方財政制度のポイントを、後半は自治体の予算と決算について。
 地方公共団体(官庁会計)と民間企業(企業会計)の違いから、国の地方の税財源配分と地方歳入の状況について、学んだ。地方財政計画の策定の仕組みと地方交付税算定(法定率と算定方法)については、人口一人あたりの単位費用により、それぞれの自治体の人口に応じて交付税が配分されるよく出来た仕組みであると改めて認識した。
 地方公共団体(国を含む官庁会計)について、行政サービスを行うことを前提とした予算づくりがすべてである。総計予算主義の原則により、自治体の活動のすべてを予算を通じて把握可能となり、予算執行上の責任を明確化している。
 議会における予算審議、議案修正、再議、予算を伴う条例案と予算の関係など一連の法令と知識を整理することが出来た。
 決算審査・認定が終われば、終了という考え方でなく、過去の執行状況・効果的な予算執行だったかを、もう一度精査し、場合によっては執行部に対して一般質問などで次の予算に向けた考え方などを問いただしていく必要性も感じた。

○条例と政策の審査・立案 元衆議院法制局参事 吉田 利宏 氏

議員提案による条例の意義
 条例について事前課題の提出があった。今回の研修参加者の事前課題の回答では、「議員提案条例の状況」について条例の提案があったのは全体の34%。3割弱という結果に。多いと見るか、少ない見るかはそれぞれだが、議員が発議してつくる条例が3割弱と考えると少ないと感じた。

 条例の基本的な考え方から、法令の構造など理解することが出来た。

 条例は議員発議でつくることも出来るため、政策を確実に実施するために「条例の制定」、条例をつくることによる「予算確保の担保」等、政策・制度の立案プロセスも重要。
 また、これまでに作られた条例が時代に即さないものも出てきており、その見直しもしていくべきと感じた。政策法務という観点で、今後機会を作り、しっかりと学びたい。

 後半の事例演習では、他市町村の議員とのグループ演習。それぞれの議員の考え方で、条例文の作成に変化が伺えた。事前に調べておいた「美しい星空を守る光環境条例」と、当時の議事録に残っていた執行部の提案理由について、今回の条例演習の際にグループ討議で紹介・事例演習の参考に出来たことは大きかった。

11/20(水)
○これからの地方議員に期待されていること 駒澤大学 名誉教授 大山 礼子 氏

 前半は、多様性ある議会へ。「議会不信」と「なり手不足」について。そもそも、現在の地方自治体の議会は多様な住民を代表しているのかというところから話があった。
 二元代表制において①多様な住民の声を代表し②住民の意見を審議に反映し③住民と情報を共有する、3点が出来ていないために議会不信につながっていると感じた。

 「議会不信」というより「議会に興味を持たれない」ということである。現状維持ではなく、常に「当事者意識により政策を変えていく」必要性を感じた。 
 地方議会人2024年9月号にあった「制限連記性」についても言及。住民の真の代表を選ぶために選挙制度の変更も提案されていた。

 後半は、信頼される議員の条件として、報酬と議員活動経費の透明性、セクハラ・パワハラの防止、政治倫理条例を例にあげて講義があった。
 住民との関係の再構築では、「情報の提供」から「共有」をとし、会議録以外で情報を整理して、住民に伝える努力が必要。議員に提供される各種資料についても、公開の原則で担保されているため、議会のみならず、議員個人でもできることがあり、住民への情報共有をしていこうと思う。 
 また、DXを使ったデジタルインフラの取組も紹介されたが、まだまだ、発展途上。活用・取組については多様な民意をアナログ的な手法と組み合わせ、双方のメリットを活用出来るようにしたい。

 3日間の研修を通して、新人議員研修という名称ではあったが、今までの議員研修での振り返り、改めて再認識・知らなければいけない基本の部分であった。

 また、議員として勘違いしている部分が多いという話を聞いて、改めていくべき点を明確にし、議会を変革していく力となる研修であったと思う。

 有権者側にいた時は気づかなかったことを、議会の中に入ることによって、また違った側面から気づくことがある。これを有権者のみならず「住民」とともに考えていく必要がある。

 今回参加された他市町村議員とも交流を通して意見交換が出来た。それぞれの自治体での課題は様々だが、よりよい地域づくりのために本研修会終了後も情報交換や課題解決に向けたオンラインを活用した学習会が出来ればと思う。